この街には、数多の噂話があふれている。ゴシップや裏情報、時には怪談。
笑いや興味驚愕、時には嫉妬、そして時には恐怖の響きで語られる言の葉たち。

その中にこめられた感情の行く末など、誰も知ることはない。
その中に紛れている真実を、誰も知ろうとはしない。
みんな、そんなものは“噂話”に過ぎないと思っている──
だが、その中に真実が紛れていることを、彼らは知っている。

彼ら、すなわち退魔師、占い師、霊能者──
霊や怪異……この世の生と行き違いを生み出す彼らを、祓い、慰める者達。
誰かを守るため、時には糊口を凌ぐため。あるいは自身の価値を確かめるため、
彼らは今日もその術をふるう。

けれど、人の心の絶望を祓うことなど、彼らにも出来はしない。
羨望、嫉妬、怒り嫉み、恐怖、屈辱、憎悪……
人の心に渦巻く絶望は、泥濘のように染み込んでゆく。
その泥濘は時として、人を崖へとも踏み出させてしまうもの。

そして今、少女の絶望の呼び声に誘われ、
鏡の中の“悪意”が目を覚ます──……